2019年8月12日笑顔の威力
全英女子オープンで優勝した渋野選手のことが、連日、ニュースやバラエティ、インターネットなどで取り上げられています。
42年振りに海外メジャー大会で優勝したこと、その過程で重圧に耐えながらバーディーを連発したことなど、とても素晴らしいですね。
しかし、そうしたことよりも私は、彼女の「笑顔」の力に注目しています。
地元イギリスの観客や他の出場選手が、彼女が笑顔でラウンドしているからこそ、温かい態度で接していると思います。
彼女は、「スマイリング・シンデレラ」というニックネームがつくほど、普段から笑顔の絶えない人なんだそうです。
彼女を見ていると、笑顔は人と人との距離を縮める力があるんだなぁ、と改めて感じました。
しかし、ラウンドしている映像で見る限り、彼女は、やたらめったらに笑顔でいるのではなさそうです。
彼女の笑顔には、2つの特色があるように感じました。
1つ目は、彼女は、人に顔を向けている時に笑顔になっています。
地面を見たり、クラブや資料を見たりしている時には、笑顔の割合は少ないように感じられました。
逆に、ギャラリーやキャディを見ているときには、ほぼ笑顔です。
これは彼女が意図的にやっているのではなく、人に対するときは笑顔で接するということが、ごく自然に身についているように思いました。
このことは、話し方においても重要なポイントです。
人前でスピーチをする時は、緊張で顔がこわばったり、余裕がなくて笑顔で話せない、ということが多いですよね。
でも、頑張って笑顔で話をすると、聞き手は「この人は楽しそうに話しているな。」「リラックスして話しているな。」と感じて、好意的に話を聞いてくれます。
一方、話し手自身も、笑顔で話すことで、楽しく話せている感じがして、声にも張りが出てきますし、音声表現も豊かになってきます。
人の顔を見ながら笑顔で話す、というのは、話し方の基本ですね。
渋野選手の笑顔の特徴の2つ目は、ショットの前は必ず真剣な顔をしていることです。
当たり前のことですが、ボールを打つ前に笑顔でいたのでは「この人、ふざけてるのかな。」と思われてしまいます。
他のプレイヤーやギャラリーに不快感も与えてしまうでしょう。
少し前に放映された「ルーズベルト・ゲーム」というドラマがありました。
社会人野球チームを扱ったドラマでしたが、その中で、ライバルのチームのピッチャーが、投げる前に必ずニヤッと笑うのです。
それを見て、攻撃側のチームが「あの野郎っ。馬鹿にしやがって!」と怒るシーンが度々ありました。
周りが真剣さを求めている場面での笑顔は逆効果になるんですね。渋野選手はこのこともしっかり踏まえていたように感じました。
これもやはり話し方に通じるものがあります。
聞き手に真剣に訴えたい時や、悲しい話をする時に笑顔で話しても説得力がありません。
物事には、「緩」と「急」、「緊張」と「弛緩」のバランスが大切です。
笑顔は、コミュニケーションを取る上で、ものすごく効果的な要素です。
しかし、その効果を活かす場面があることをしっかりと意識したいものです。